話は尽きない

音楽、数学、言語学、人類学などについて

音符の組合せとフィボナッチ数列

n連符を使って構成される音符を考えます。
あらゆるリズムを音価まで考慮した場合、それぞれの音符は何パターンになるでしょうか?

n=1〜5までを書き出してみましょう。

n=1のとき(2通り)

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n=2のとき(5通り)

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n=3のとき(13通り)

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n=4のとき(34通り)

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n=5のとき(89通り)

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さて、このn連符を使って構成される音符のパターンの総数をBnとおいたとき、Bnとnにはどのような関係があるでしょうか?
Bnを順番に並べて観察します。

B_n=2,5,13,34,89,\cdots


どうやら、Fibonacci数列(1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,…)の数字によく似ています。
具体的には、Fibonacci数列の3番目以降の奇数項(2n+1番目の項)とBnが対応しているように見えます。

これを改めて書き直すと、以下のような予想になります。

予想

n連符を使って構成される音符のパターンの総数をB_nとしたとき、B_n=F_{2n+1}が成り立つか。
(※ただし、F_{n+2}=F_{n+1}+F_n , F_1=F_2=1

 

この関係性についての予想をTwitterで呟いたところ、ADE(@grand_antiprism)さんからものすごい速さで証明を作っていただきました。以下、本人から許可を得たのでそのまま掲載させていただきます。

証明①

ADE(@grand_antiprism)さんにいただいた証明
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n連符のことをn拍としてたり(確かにその方がわかりやすい)、表現の違いが若干ありますが結論としてはです。


つまり、n連符を使って構成される音符のパターン数は、Fibonacci数列の奇数項になるということがいえました!


証明②

続いて、僕が考えていた別のルートからの証明も載せておきます。

まず、B(n)の漸化式を考えます。
B(n)の先頭の音符が「独立した音符」「2個分以上伸ばした音符」「休符」の3種類です。ここで「独立した音符」の個数は先頭の音符以外のn-1個の音符の組み合わせなので、B(n-1)個。同様に、「休符」の個数も先頭の休符以外のn-1個の音の組み合わせなので、B(n-1)個となります。

すなわち、B(n)=2*B(n-1)+「2個以上伸ばした音符」となります。
続いて、先頭の音符が2個以上伸ばした音符を場合分けすると、「2個分伸ばした音符」と「3個以上伸ばした音符」に分けられます。
「2個分伸ばした音符」の個数は残りのn-2個の音符の組み合わせなので、B(n-2)個。

つまり、B(n)=2*B(n-1)+B(n-2)+「3個以上伸ばした音符」となります。
このようにしてB(n-k)を足し合わせていくと、最終的に先頭の音符が「n-1個以上伸ばした音符」のB(1)個の音符と、「n個伸ばした音符」すなわち4分音符1個分が残ります。

よって

B_{n}=2\cdot B_{n-1}+B_{n-2}+B_{n-3}+\cdots+B_{1}+1 \tag{1}


という漸化式が得られます。
また、(1)より

B_{n-1}=2\cdot B_{n-2}+B_{n-3}+B_{n-4}+\cdots+B_{1}+1 \tag{2}


となります。
さらに(1) - (2)を計算すると、B_{n-3}以降が打ち消しあうので

B_{n}-B_{n-1}=2\cdot B_{n-1}-B_{n-2} \tag{3}


(3)を整理すると

B_{n}-3\cdot B_{n-1}+B_{n-2}=0 \tag{4}


ということで、証明①の(3)と同じ形になりました。


おまけ:B_nの一般項を求める

最後に特性方程式を用いてB_nの一般項を求めてみます。もちろん、F_{2n+1}の一般項といっても同じ意味です。

B_n=3\cdot B_{n-1}-B_{n-2}かつB_1=2,\ B_2=5となるB_nの一般項

 

x^2+3x-1=0の解を \displaystyle s=\frac{3+\sqrt{5}}{2},\ t=\frac{3-\sqrt{5}}{2} とおくと
s+t=3,\ st=1より

B_n=(s+t)B_{n-1}-st B_{n-2} \tag{1}


これを変形すると

B_n-s B_{n-1}=t(B_{n-1}-s B_{n-2}) \tag{2}


よって、B_n-s B_{n-1} は公比 t の等比数列となる。
B_n-s B_{n-1}B_2-s B_1t^{n-2} 倍した形と考えることができるので

B_n-s B_{n-1}=t^{n-2}(B_2-s B_1) \tag{3}


( )内を計算すると

B_2-s B_1=5- \displaystyle \frac{3+\sqrt{5}}{2} \cdot 2=2+\sqrt5 \tag{4}


(3),(4)より

B_n-s B_{n-1}=(2+\sqrt5) t^{n-2} \tag{5}


同様に(1)を変形すると

B_n-t B_{n-1}=(2-\sqrt5)s^{n-2} \tag{6}


(5),(6)よりB_{n-1}を消去してBnについて整理すると

B_n=\displaystyle \frac{(2+\sqrt5)t^{n-1}-(2-\sqrt5)s^{n-1}}{t-s} \tag{7}


tとsを戻すと

B_n=\displaystyle \frac{1}{\sqrt5}\biggl\{(2+\sqrt5)\biggl( \frac{3+\sqrt5}{2} \biggl)^{n-1}-(2-\sqrt5)\biggl( \frac{3-\sqrt5}{2} \biggl)^{n-1}  \biggl \} \tag{8}


ということで、Bnの一般項がわかりました。